2021年俺の漫画大賞ノミネート作品
シマシンヤ「ロスト・ラッド・ロンドン」
藤本タツキ「ルックバック」
速水螺旋人「ワルプルギス実行委員回実行する」
ここんとこ家にいることが多かったので、話題の「十三機兵防衛圏」をプレイしてました。
まだ全クリアしていないのですが、あとは最終戦を残すのみとなっています。
(とかいって自分が最終戦だと思ってるだけで、実は違ったらどうしよう)
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まだプレイしていない方もいらっしゃると思うので多くは語りませんが、「衝撃の結末があなたを襲う!」みたいな宣伝や口コミを知ってから作品に触れると、「思ったほどじゃなかったな…」とちょっと冷めた感じになってしまうこともあるので、なるべく前情報を仕入れずにプレイすることをお勧めいたします。
(たとえば自分は映画「マトリックス」とか「ファイトクラブ」は前情報を全く仕入れないで見に行ったので、とても楽しめたクチです)
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ちょっと驚いたのが、後半に判明する意外な人間関係です。こういう関係を揶揄するでも冷やかすでも特殊な嗜好性の上に立つのでもなく、さらっと当たり前のように開示して組み込むあたり、今風だな! って思いました。
そのほかストーリーの構造とか、キャラクターの動機づけとか、語りたいことは色々あるんですが、しょせんは「できたものをプレイさせてもらった」者側の、勝手な結果論ではないか、と思うので言わんでおきます。
あとこれだけは言っておきたいというのは、薬師寺恵さんがとても可愛いということです。
あとはやきそばパンがやたら食べたくなります。
ではまた。
はい、引っ張りまくりました。その間、候補作を読み返しつつ迷っておりました。
やはり初めて読んだときの新鮮な感動を大事にしたいということで、こちらを2018年俺のベスト漫画大賞に挙げたいを思います。
俳句まんが……というより、文芸創作まんがといったほうが正しいでしょうか。
皆さんは俳句を作ろうと思ったことがお有りでしょうか。自分はありません。読んだことはありますが、一般の人々にはおおよそ縁遠いものだと思います、俳句。
本作では大学に入って何故か「俳句ゼミ」に配されてしまった主人公が、個性的なゼミ生たちと一緒に、ちょっとヘンな先生のもとで俳句の作り方を学んでいくことになります。
面白いのは、内容がガッツリ「授業」であることです。
こんな感じで、作中で「課題」が出されます。
なるほど自分ならどうしようかしらんなどと考えつつ読み進めているたちに登場人物たちが作成した例が提示され、講評が始まります。この授業が、なんとも魅力的です。
大学の授業って、楽しいですよね? 自分は(少なくとも興味のある分野の授業は)わりと好きで、好きな先生の授業を単位に関係なく、4年連続でとってたことがありました。
そう、勉強って楽しい。脳をかきわけて未知の分野について知り得るのは嬉しい。本作においてそれは俳句、より深く掘り下げるなら「日本語」そのものの表現の可能性について、脳ミソの中の未開の原野を耕し広げるかのように蒙を啓いてくれる、そんな作品です。
ちなみに上記の回の最後には、穴埋めの「元の句」が提示されます。ひっくり返ったあと逆立ちして土下寝してうずくまること必至です。
でも上述は「穴埋め俳句」であって「穴埋め問題」ではない。それが本作のキモでもあると考えています。
本作は「授業」として、作ってきた俳句を容赦なく添削して「直して」いきます。
でもそれは、俳句として「間違っている」「正しくない」からではなく、俳句というルールのあるゲームの中で、よりスマートなムーブについて教えてくれているから。そして一文字変えるだけで、こんなに表現として豊かになるのかと読んでいて驚くことでしょう。
第一巻の最後では、この俳句はただの感想にすぎないと評されたとある句が、読み手が本当に伝えたかったことを受けた先生の手によって直されて生まれ変わります。
照り映ゆて! 照り映ゆて、って!!(鳥肌)
この、言葉の表現がただ書いてある意味を超えてイマジネーションが爆発する瞬間の快感ときたら。一瞬、風邪を引いたのかと思う悪寒にも似た感動が背筋をビビビと走りました。こいつぁヤベえ……!
オチみたいな画像を貼ってしまいましたが、上記に至るまでの過程を含めてのビビビなので、ぜひご一読をおすすめいたします。というわけで勝手に俺のベストまんが大賞2018に選出させていただきました。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
本作の舞台となっている大学「八島大学芸術学部」ですが、モデルは言うまでもなく「日本大学芸術学部」略して「日芸」です。作者の本田さんの出身大学なんだそうで、1年生が勝手にゼミに振り分けられるのも実際にある話だそうです。
日芸、実は自分が行ってみたかった大学でした。落ちましたけど。
そんなわけで、行ってみたかったというアコガレも含めての選出理由だったりして。
今後も日芸の大学生ライフを読むのが楽しみなので、2巻以降も心待ちにしております。
ガイコツ書店員 本田さん 1 (MFC ジーンピクシブシリーズ)
「ほしとんで」読んでから、本田ってガイコツ書店員のか! と気づきました。こっちもめっちゃ面白いのでおすすめです。アニメもよかったです。
前編のエントリで挙げた作品の中で、重要なのをひとつ忘れていました。
メタモルフォーゼの縁側(1) (カドカワデジタルコミックス)
2018年に出会った作品の中で、特に「よかった…」と思えた作品がこれ、「メタモルフォーゼの縁側」です。
夫に先立たれ、個人で書道教室をやっている老婦人が、ちょっとしたきっかけで新しい世界に出会い、その瑞々しく美しい感性に浮世のあれこれを忘れて心が解きほぐされていくという。で、新しい世界というのがBL漫画なのです。可愛らしくも面白い。
ちょっと似ているかもと思った作品に「マキとマミ」があります。こちらは公式から更新を止め、供給がなくなってしまった衰退ジャンル作品(とある恋愛シミュレーションゲーム)にハマってしまった女性二人の「共感性オタクあるある」なのですが、実際には「好き」を共有する友達と出会うことができたことの慶びこそがテーマなのではないかと自分は思っています。
マキとマミ?上司が衰退ジャンルのオタ仲間だった話? (コミックエッセイ)
好きを共有できる仲間がいるのって、いいよね……ということをお伝えしたかった。というわけで、こちらも2018年俺のベスト漫画大賞の候補作の一つです。
結果は、後編で書きます。
(そんな引っ張るようなことでもないけど)
あけましておめでとうございます。
ボーッとしてたら更新しないうちに年を越してしまいました。
2018年のベスト漫画対象、もちろん何にしようかずーっと考えておりました。
■俺のベスト漫画大賞の選考基準:
・年内(2018年)に1巻を発売した作品であること
苦悩の結果、最終候補まで残った作品は、以下の3作品でした。
そういえばこれ、今年でした。もしかしたら本誌より勢いあるんじゃない? と思わざるを得ない「ジャンプ+」が、またもやスマッシュヒットを放ってくれました。異能を持った死刑囚たちが、異形の住まう島で不老不死の秘薬を探すデスゲームを始める!
と思ったら初っ端で登場人物の大半がリタイヤしてしまったり、メインの登場人物だと思っていた人があっさり居なくなったりと、何が起きるのかわからない緊張感が心地よい作品です。
最近ちょっと話のペースがゆるやかになってきているのに不安を感じなくもありませんが、ジャンプ系列では「鬼滅の刃」と並んで期待している作品です。がんばれ!
(「鬼滅の刃」も今年全巻読み返してめっちゃハマった作品の一つです)
2018年は、自分にとって衿沢世衣子を再発見した年でもありました。
以前から雑誌などでちょくちょく作品をお見かけすることもあったのですが、まとまったものを読んで「こんな才能を今まで見逃していたなんて!」と自らの不覚を呪ったものです。
上述の作品は各雑誌に掲載された短編を収録したもので、日常に潜むミステリ……というには軽すぎる、なんとも言えない脱力感が漂うナイスな作品集です。史上初のハンドスピナー漫画も収録されています。おもしろいよ。
一方で長編「うちのクラスの女子がヤバい」も非常におすすめです。最後まで読み切ったときの衝撃がヤバい(語彙)。石黒正数の「外天楼」を思い出しました。3巻までしかないので、とりあえず手にとってご覧いただくことをおすすめいたします。
うちのクラスの女子がヤバい(1) (少年マガジンエッジコミックス)
「ほんとしんで」ではありません。美大に入学して、何故か俳句ゼミに配属されてしまった学生(たち)が、俳句と「ことば」の深淵に足を踏み入れていくという作品です。
こういった作品にありがちな「日常の問題を全部、●●が解決してくれる」(●●には、絵画とか料理とか、テーマが入ります)みたいな作品ではなく、マジで俳句とはどういうものなのかについて突っ込んでいくのが興味深い。なるほど俳句を題材にした漫画ってそういえばありませんでした。
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以上3作品、どれをベストにしたのかについては……この次のエントリで書きます。
今年も、この時期がやってまいりました。
年間ベストまんが大賞を決める時期が。
毎年、星の数ほど発売されるまんがの中から、「その年に1巻が発売された」作品の中から、特にこれはすごかった! 膝ピシャだった! 素晴らしかった! という作品を1つピックアップし、褒め称えるものです。
2014年 魔法使いの嫁
初回限定版 魔法使いの嫁 11 (BLADE COMICS SP)
2016年 かぐや様は告らせたい
かぐや様は告らせたい?天才たちの恋愛頭脳戦? 12 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
2017年 映像研には手を出すな!
困ったことにこれが、なかなか該当する作品がないのです。
2017年のときはあれだけさんざん候補をあげて迷いに迷ったのですが。
「今年出た作品」という条件に絞り込もうとすると、難しい!
どれもこれも、2017年に出た作品だったり、大変おもしろいけど単行本が出るのが2019年だったりするのです。なんかタイミング悪い!
というわけで、大変前置きが長くなりましたが、今回は候補に入れたかったけど漏れた作品を、ここでは紹介させてください。
昨年、この作品のことを知らなかったのが大変悔やまれる作品。ただ、今年になって作中の登場人物の一人の内心が吐露されるに至って「大化け」した、と感じる作品でもあります。
おかげで自分は、ことあるごとに人に「読んで、これ読んで!」と叫んで回っております。いいから5巻まで読んで!
この作品の1巻がもし今年発売だったら、まちがいなくベストマンガ大賞に挙げていたでしょう。でも来年の2月発売なんですよ!
WEB上で大変話題になったので、読まれた方も多いと思います。キャラクターの魅力・輝きが大変すばらしい。どの登場人物も、かならず深層を持っているのが興味深いです。
WEBで全部読むことができます。
一度読み始めたら止まらなくなってしまうでしょうから、時間に余裕のあるときに読み始めることをオススメいたします。
2017年時点で読んでいなかったことが悔やまれる作品です。
動物の擬人化に留まらず、その性質、肉食動物と草食動物という埋められない種族の溝と、これを超えんとする友誼の物語を青春風味に味付けしておいしく頂けてしまいます。作者が板垣恵介の娘ってホントなのかな。
これも2017年なんですよね……。自分は2018年の冒頭にこれを読んでひっくり返りました。
作者は「町でうわさの天狗の子」の岩本ナオ。大事なことをセリフとか状況説明でベラベラ語らず、絵とストーリーの展開で持っていこうとするのが「ランドリオール」などにも似て大変素晴らしい作品です。何度でも読み返したくなってしまいます。
これも2017年……。昨年ってどれだけ豊作だったんだよ!? と思わず我が眼を疑います。自己主張が弱く人に流されやすい女性「凪」が、モラハラ彼氏に意を決して別れを告げて「お暇」な日々を過ごすうちに自分を取り戻していく……と思ったら、物凄い展開になっちゃって!? という目が離せなくなること請け合いな作品です。
これも2017年……。両親を事故で亡くした女の子が、小説家の叔母と共同生活を始めるというストーリーながら、ただのハートウォーミングストーリーにならないのがヤマシタトモコの凄いところ。「あなたのことを愛せないから」と堂々と制限され、各個の独立した人間として関わり合っていくという絶妙な距離感が面白いのなんの。
いったんここで区切りとさせていただき、引き続き「今年1巻が発売された」すばらしく面白いまんがについて考えて、年末までに書きたいと思います。
え? 「天国大魔境」ですか?
あれはもう、「このマンガがすごい!」獲っちゃったからいいじゃないですか……
自分は自分のすすめられるベストを、おすすめしたいと思います。
ではまた。
瀬川藤子の新作「コノマチキネマ」の1巻が出ました。
みなさん読まれました? 俺は読みました。最高です。
瀬川藤子作品は大好きです。
作品の魅力はなんというか……「世間的に正しいとされている安直な正義感の否定」というか、「人と人はけっきょくわかりあえない」というか、カワイイ絵の割にそこはかとない厭世観が漂っているところでしょうか。
それでいて、人間大好きな感じ。たまりません。
今作は映画の話かと思ったら全然違っていましたが、瀬川藤子節はあいかわずでした。まだ始まったばかりなのでこれからどうなるかが楽しみです。
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上記作品が出ると同時に、過去作も電子書籍化されたようなので、試しに読んでみてはいかがでしょうか。
それでは。