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あれこれ書く予定。

いぬいしょう「People」の素晴らしさを語りたい

2024年2月5日は全国に大雪となりました。

交通機関が麻痺などして大変だったなあ……という思いも冷めやらぬ中、先日発売されたGoodアフタヌーン2024年3月号に、大変な傑作が掲載されていたので、これについて是非語らせてください。

アフタヌーン四季賞2023冬 四季賞受賞作品
いぬいしょう「People」

折しも観測史上稀に見る大雪に見舞われた日の夜、今日も残業で遅くなりそうな気配が漂うオフィスで、母からの交通事故の電話を受けたサラリーマンの柳木。

慌てて自身の通勤用の車(雪国らしく四駆車)で駆けつけたところ、幸い大したことがなかったので送り届けて仕事に戻ろうと焦る中、雪が降りしきる路上で何故かバスを待つ老人を見つけてしまい……。

朝までに片付けなければならない仕事が山程残っているんだ、早く戻らせてくれ!
と切羽詰まる気持ち、現代人なら痛いほどよく分かると思います。

しかし物語は、「行方不明のおじいちゃん」とか「妊婦」とか「子供が生まれそう」とか、絶妙に無視できない事件が折り重なるように立て続けに起こって、主人公を会社に戻してくれないんですね。このクソ忙しいときに!

最初は「俺がでしゃばる必要なかっただろ」とか「おせっかいする義理なんてねえんだから」と思いつつ、これ見送ったらマジのマジで帰る(会社に)! ……と思っている柳木ですが、救急車が来て困らないように雪かきしたりとか、ちゃんと見送ったりとか、結局のところ見捨てることなんてできないんですね。

彼が特別に善人であるとは思いません。困っている人がいたら助ける。誰だってそーする。俺もそーする。要するに普通の人です。

そして普通の人の善意に対して、この作品はちゃんと普通にお礼で報いる。

この描写、当たり前のことのようだけど素晴らしいと思います。

序盤では母親へ「その四駆への信頼は何なん?」とか言って斜に構えたセリフも、

終盤では、陣痛が始まった妊婦を送り届けるために、「大丈夫 この車 四駆だから」と安心させるために使っていたりして、台詞の回収の仕方も素晴らしい。

悲劇は起こりません。結局一晩、会社に戻ることができなかったということを除けば。
あ〜〜あ………仕事どうしようかな……
ってこの気持ち、分かる……。

けどがんばった柳木には、ちゃんと報いがあるんです。
本来の用法である「情はひとのためならず」とは、まさにこのことかなと思います。

ラストについては、是非コミックDaysで読んで確かめてください。
爽やかな読後感。柳木の背中に、ちょっと自分も泣きました。

本当に素晴らしい作品だと思います。ありがとうございます。映画化してほしい。

それにしてもアフタヌーン四季賞は相変わらず凄まじいクオリティの傑作が寄せられますね。

四季賞の受賞者が今のアフタヌーン系作品の打線の主軸を担っていると思うと、このいぬいしょう先生もいずれは……と、今後に期待せざるを得ない!

ちなみに調べてみたところ、講談社の投稿系サイト「DAYSNEO」に2021年、作品を投稿されていました。ここで担当が決まって、一緒に作品を作って、今回の四季賞受賞になったという流れなんですかね。

いぬいしょう「サンブリンガー」

1話読む限り、これめっちゃ面白いんですけど!?

これ続きは……?

ねえ……!

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