いまさらですが、俺の漫画大賞2023のノミネート作品の一覧です。
ノミネート対象は、例年通り「2023年に1巻が発売された作品」。
いずれ劣らぬ傑作ぞろい。
つまり全部1位と言って過言ではないと言わざるを得ないのが現状です。
■矢寺圭太「ずっと青春ぽいですよ」
高校のアイドル研究会部長・山田には野望があった。それは自分たちでアイドルをプロデュースして文化祭でコンサートを成功させること! ずっと一人ぼっちだった山田が新入生という強い味方を得て異様なバイタリティで活動を始める!
かわいい男子・杉森に女装させたり、一度は断ったギャルたちが妙にプロデュースに乗り気になったり、女子同士も意識の違いで片方が劣等感を感じてしまっていたり……と、やってることはボンクラそのものなのに、ハタから見ていると「青春してやがるぜ、こいつら……!」とちょっと羨ましくすらなってしまいます。
■和山やま「ファミレス行こ。」
和山やま先生のオフビートで低温な笑い、一度読んだら夢中さ、君も。
映画化もされた「カラオケ行こ!」の続編。大学生になった聡実くんはちょっとしたキッカケからファミレスでバイトを始める。そこにはなぜか毎晩入り浸る漫画家や、喋らないと死ぬんじゃないかというほどよく喋る先輩、そして相変わらず腐れ縁が続いているヤクザの狂児も現れて……。
聡実くんがバイトを続ける理由を軸に、さまざまなキャラたちの群像劇が描かれる、いわゆるグランドホテル形式。意外な人物同士のつながりが明らかになり、次第に転がり始めていく物語がどこに決着するのか目が離せません。
ちなみに映画「カラオケ行こ!」は、原作の要素を膨らませてさらに面白い作品となっているので、原作ファンなら是非ご鑑賞ください。
■平井大橋「ダイヤモンドの功罪」
ただ友達とスポーツがしたい心優しい少年が、その有り余る才能によって周囲の大人たちを狂わせ、やがて本人の意に反した世界へと足を踏み入れていく、まさに少年のアビス(違う漫画)。
すでにマンガ大賞を受賞するなど数多くの評価を得ているので説明不要かと思いつつ、挙げず居られない面白さ。まだ読んでない? 読んでください。地獄への道は善意によって踏み固められている、という言葉を思い出します。
■海野つなみ「クロエマ」
洋館に済む謎の美女クロエと、その庭先で勝手に野宿しようとしてとっ捕まったワーキングプアホームレスのエマ。
二人が出会って、成り行きでいっしょに住むことになるものの、特に仲良くなるわけではなく、持ち込まれる不可解な事件も別に解き明かそうとせず、最終的に何も解決しない。書くとワケがわからないかもしれませんが、そういう内容なんだもの……。
作品全体に漂う乾いた笑いと不穏な空気たたまらなく面白いです。作中で語られる現代の世相と容赦ない切り口は、さすが海野つなみ先生。
■阿賀沢紅茶「氷の城壁」
2023? と思われるかもしれませんが、2023年に1巻がリリースされたのでノミネート対象とします。もともとタテ読み漫画としてリリースされ、阿賀沢紅茶先生の実力を世に知らしめた名作が、読みやすく入手しやすいコミック版として再出版されたもの。すでに大変に有名ですが、タテ読みはちょっと苦手……という未読の方は是非。
中学時代に人間関係に悩まされ、親友の美姫にしか心を許さなくなっていた小雪。やがて出会ったヨータやミナトらの友人たちと交流を重ねていくうち、次第に自分自身の過去に向かい合うことになり……。
大枠で言えばラブコメ。直球火の玉ストレートなラブコメです。でも、なかなか詳らかにされない(心を閉ざしている表現の一貫でもある)小雪の過去が明らかになっていくにつれ、友達とか恋人とか好きな人とかって何なんだろうね……と一緒になって悩んでしまうかも。
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2024年もどんな傑作に巡り会えるのか楽しみです。