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あれこれ書く予定。

2018年、俺のベストまんが大賞:後編

はい、引っ張りまくりました。その間、候補作を読み返しつつ迷っておりました。

やはり初めて読んだときの新鮮な感動を大事にしたいということで、こちらを2018年俺のベスト漫画大賞に挙げたいを思います。

 ■本田「ほしとんで」
ほしとんで01 (ジーンLINEコミックス)

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 俳句まんが……というより、文芸創作まんがといったほうが正しいでしょうか。

■俳句のことを知ってみよう!

皆さんは俳句を作ろうと思ったことがお有りでしょうか。自分はありません。読んだことはありますが、一般の人々にはおおよそ縁遠いものだと思います、俳句。

本作では大学に入って何故か「俳句ゼミ」に配されてしまった主人公が、個性的なゼミ生たちと一緒に、ちょっとヘンな先生のもとで俳句の作り方を学んでいくことになります。

面白いのは、内容がガッツリ「授業」であることです。

こんな感じで、作中で「課題」が出されます。

なるほど自分ならどうしようかしらんなどと考えつつ読み進めているたちに登場人物たちが作成した例が提示され、講評が始まります。この授業が、なんとも魅力的です。

大学の授業って、楽しいですよね? 自分は(少なくとも興味のある分野の授業は)わりと好きで、好きな先生の授業を単位に関係なく、4年連続でとってたことがありました。

そう、勉強って楽しい。脳をかきわけて未知の分野について知り得るのは嬉しい。本作においてそれは俳句、より深く掘り下げるなら「日本語」そのものの表現の可能性について、脳ミソの中の未開の原野を耕し広げるかのように蒙を啓いてくれる、そんな作品です。

ちなみに上記の回の最後には、穴埋めの「元の句」が提示されます。ひっくり返ったあと逆立ちして土下寝してうずくまること必至です。

でも上述は「穴埋め俳句」であって「穴埋め問題」ではない。それが本作のキモでもあると考えています。

■表現に正解はない

本作は「授業」として、作ってきた俳句を容赦なく添削して「直して」いきます。

でもそれは、俳句として「間違っている」「正しくない」からではなく、俳句というルールのあるゲームの中で、よりスマートなムーブについて教えてくれているから。そして一文字変えるだけで、こんなに表現として豊かになるのかと読んでいて驚くことでしょう。

第一巻の最後では、この俳句はただの感想にすぎないと評されたとある句が、読み手が本当に伝えたかったことを受けた先生の手によって直されて生まれ変わります。

照り映ゆて! 照り映ゆて、って!!(鳥肌)

この、言葉の表現がただ書いてある意味を超えてイマジネーションが爆発する瞬間の快感ときたら。一瞬、風邪を引いたのかと思う悪寒にも似た感動が背筋をビビビと走りました。こいつぁヤベえ……!

オチみたいな画像を貼ってしまいましたが、上記に至るまでの過程を含めてのビビビなので、ぜひご一読をおすすめいたします。というわけで勝手に俺のベストまんが大賞2018に選出させていただきました。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

■余談:私的な選出理由

本作の舞台となっている大学「八島大学芸術学部」ですが、モデルは言うまでもなく「日本大学芸術学部」略して「日芸」です。作者の本田さんの出身大学なんだそうで、1年生が勝手にゼミに振り分けられるのも実際にある話だそうです。

日芸、実は自分が行ってみたかった大学でした。落ちましたけど。

そんなわけで、行ってみたかったというアコガレも含めての選出理由だったりして。

今後も日芸の大学生ライフを読むのが楽しみなので、2巻以降も心待ちにしております。

■関連作品:

「ほしとんで」読んでから、本田ってガイコツ書店員のか! と気づきました。こっちもめっちゃ面白いのでおすすめです。アニメもよかったです。